世界がつながる バーチャルフォトウォーク(Virtual Photo Walks)Vol.1
新型コロナウィルス感染の第一波以降、リモートワークや会議、営業などですっかりオンラインでのやり取りが日常化してきましたが、
実は福祉と思いやりの分野で、コロナ以前からすでにバーチャルでつながる可能性を見出し実践してきた団体があります。
それがバーチャルフォトウォークです。その活動のご紹介から今後の展望まで、じっくりお伝えします!
歩けない人の足になれば、みんなの世界は広げることができる
バーチャルフォトウォークは「寝たきりや障害、その介護等で外出できない人々に、外の名勝や美しい景観をライブでストリーミングし、長引く闘病・看病の精神的苦痛を軽減してもらおうとする世界的ボランティア活動」 です(バーチャルフォトウォークのHPより引用)。
「歩く、歩けない人のために(Walk the walk for those who can’t)」をモットーとしたこの活動は、カナダ人カメラマンJohn
Butterill(ジョン バテリル)氏が創設。そこに日本の翻訳家永堀典子さんが共感し、2016年6月より日本でも活動をスタート。2021年にはNPO法人として設立登記もしています。
「Zoomを使い、世界中を旅することができるだけでなく、リアルタイムで参加者同士がコミュニケーションしながら一緒の時間を共有することができるのが魅力です。
「ここに集まることがまた新たなコミュニティ形成につながる」と創始者のJohn氏。
現在、月に8回程度のペースでライブが行われており、日本国内だけでなく、地中海、北米、タイなど各地と繋がることができます。
▲ 翻訳家の永堀典子さん
▲ 時差14時間にも関わらずカナダからzoomでインタビューを受けてくださったJohn氏と永堀さん。貴重なお話をありがとうございます!
この旅をナビゲートしてくれるのがプレゼンターと呼ばれる方々です。
スタビライザーを手に、世界各地からリアルな旅をお届けする彼らは国籍も年齢も様々で、最年少はなんと13歳!
歩けない人がいるのなら、歩ける自分たちが代わりに歩こう、という支援の輪が広がっています。
また、どうしても自分の好きな風景を見せたい、と理事の高山さんがプレゼンターとして参加したときには、見ている方々に一層の生きる勇気を与えました。
なぜなら、高山さんご自身が脊髄損傷であり、ご自身で体を動かすこともままならなかったからです。それでも皆が協力し合い、高山さんが愛する洞爺湖の風景を自らの言葉でリポートすることに成功。
同じ時間を共有したあとは、家族のような一体感が生まれたそうです。
未来の「思いやりのヒーロー」プログラム
さて、バーチャルフォトウォークは、外出がままならない方々に美しい景色をお見せするだけではなく、青少年の健全育成を目的として、「思いやりのヒーロー養成プログラム」を展開しています。
これは創始者のJohn氏が北米メディアで取り上げられた際に「Mindful Hero(思いやりのヒーロー)」と称されたことにちなんで名づけられたプロジェクトです。
学生がバーチャルフォトウォークのプレゼンターとしての研修をし、実際にスマートフォンをもって外を歩く活動を通して、病気の方や障がい者のもつ困難を理解し配慮する機会を得るとともに、プレゼン力、英語力、カメラワークなどの発信力を強化することができるプログラムとなっています。
この構想は、永堀さんご自身も子育てを経験する母として、学校生活で障がいのある方や重病の方と触れ合う機会が少ないことに違和感を感じていたことに端を発します。
”子どもたちや学生は、決して思いやりがないわけでも、社会的弱者と呼ばれる方々を粗末しているわけでもない、ただ理解をするチャンスがないだけだ”
と永堀さん。
そこで、このプログラムを通じて、世界の障がい者の方々と直にコミュニケーションをとることにより、感性豊かな10代~20代前半のうちに社会の様々な状況を理解するきっかけとしてほしいという願いが込められています。
思いやりをカタチにできる力をもった若者が社会に出たら、社会はきっともっと優しくなれる、お話を伺って私もそう感じました。
さらに嬉しいことに、このプログラムをみたカナダの一人の弁護士が自国でもやりたいと導入。人権大国のイメージのあるカナダですら、若い人が高齢者への敬意を忘れている、と危機感を持っていたとのことで、このプログラムの随所にみられる、日本ならではの細やかさが世界に発信されているそうです。まさに思いやりの逆輸入。こうやって世界はつながっていくのですね!
バーチャルフォトウォークに参加するには
バーチャルフォトウォークにご興味ある方は以下のような方法で参加することができます。
1. 視聴者登録をする
まずは視聴者として参加するという方法があります。登録するとプログラムの案内が随時届きますので、リンクをクリックするだけ。
簡単に世界の方々と繋がることができます。
日時は固定ではなく、土日開催もありますので、平日お勤めの方も参加が可能です。
2. プレゼンターとして参加する
カメラの心得のある方、旅先で歩くことができる方はプレゼンターとして参加するという方法もあります。
資格は必要ありません。登録をされた方には事前のトレーニングがありますので安心です。
ライブプレゼンテーションの経験はバーチャルフォトウォークの中だけでなく、ビジネスでも学校でも役に立ちますよ、と永堀さんからコメントをいただきました。
3. 賛助会員として、もしくは寄付の形で参加
NPO法人の賛助会員として、もしくは寄付をすることで活動を支援する方法もあります。
いずれも詳しくはバーチャルフォトウォークのHPをご覧ください。
✽バーチャルフォトウォークHPはこちら
https://www.virtualphotowalks.org/
実際に体験してみました
好奇心旺盛な私も実際に体験するため、さっそく視聴登録。
初めて参加したのは、タイの銀閣寺といわれるお寺を紹介するウォークでした。
タイ在住のプレゼンター、シーアさんがアルミニウム合金や純銀に美しい彫刻を施した寺院の中を実際に歩いて紹介してくださいました。
タイの熱い空気と金属のひんやりとした質感、どちらも体感しているかのようにリアルでした。
歴史を知り、風土を知り、作業風景やお土産屋さんまで覗くことができて、気が付けば1時間のショートトリップは終了。
あっという間の時間でした。
是非皆さんにも体験していただきたいと心から思います。もちろん、私もまた参加するつもりです!
さあ、歩こう!
Zoomというハイテクノロジーと人間らしい思いやりが融合したこのプロジェクトは、新たなコミュニティ形成に一役買っているといえるでしょう。
障がいのある方や社会的に弱い立場にある方々の孤立解消をするだけでなく、国際交流、青少年の育成という側面も持つバーチャルフォトウォーク。今後はさらに、安否確認の地域防災プログラムにも発展する可能性も秘めています。
"「コミュニケーションの形がどんな方法であれ、心に「愛」をもって、手に手をとって繋がれると、みんなが友達のような、時には家族のような関係になっていると感じます。相手を思いやる気持ちと、自分自身がコミュニティの「当事者」であるという気持ちをはぐくめる、
そのよりどころのひとつとして、このバーチャルフォトウォークが機能していくことを願っています」"と永堀さん。
次回はバーチャルフォトウォーク誕生秘話と日本での活動開始までの軌跡、代表であるJohn氏と永堀さんの思いについて、さらにお伝えします。