「働き方改革」ってなんだろう
  ~特別養護老人ホームしゃくなげ荘の挑戦~

特別養護老人ホームしゃくなげ荘特集 第三弾の今回は、現場職員さんへのインタビューです。

山本施設長との出会いが人生を変えた
~松田直人さん(2007年入社 職員歴13年)~

松田さん

介護士、ケアマネとして活躍する若きお父さんでもあります。

--しゃくなげ荘のICT化、ペーパレス化などの取り組みへの手応えはありますか。
「入ったときは手書きの記録でした。PCもあるにはあったけれど、ここまでモバイルで打つというのは全然なかったので楽になりましたね。その分他のことに時間が使えるようになって、特に利用者さんに話を聞く時間ができるようになりました。自分は新しいことは失敗してもやりたい派、その方がデータもとれるなっていうのがあって、抵抗はなかったです。」

--デジタル化はレクなどにも取り入れられていますが、これらはどなたのアイディアですか?
「今、自分はアクティビティ委員会の委員長をやってまして。そこでみんなで決めています。特にコロナの影響は大きいかもしれません。今までやってたことができない、じゃあどうする?という発想から始まりました。」

--制約があると、あれもこれもできないし、という否定ばっかりになってしまいそうな気もしますが。
「委員会メンバーはもしかしたら『えー』っていう思いを抱いたかもしれません(苦笑)。でもまあ、新しいことをやれば批判されることもあるってわかってるので大丈夫です。それに、利用者さんが喜んでくれたっていう事実があるので、結果的に成功だと思います。」

--利用者さん目線?
「そうですね。それに利用者さんが喜んでくれて、それを発信していけば、結果、家族が喜んでくれたりとか、『しゃくなげ荘っていいよね』って評価してもらえたりだとか、いろいろつながっていくと思います。」

--アクティビティ委員会ではほかにどのような計画を立てられていますか?
「前提としてここは『生活の場』なので、『利用者さんのストレスを軽減する』とか、『笑顔になってもらいたい』とかざっくりとした年度目標がありますけど、ゴリゴリに中長期的な計画をびしっと、という感じではないですね。例えば今月はちょうど『お寿司の日』っていうのがあるんですけど、それは去年の同じころにやってよかったのでまたやろうかなと考えているところです。食べたい方を募ってお寿司を一緒に食べてもらう企画です。施設の中なのでマスクはしてないですけど、去年と違って、多目的ホールなども使って広く距離をとって行います。」

委員会のお話がでましたが、しゃくなげ荘には職員で構成されている委員会がたくさんあります。ケアワーク委員会や、リスクマネジメント委員会、広報委員会…ジャンルも多岐にわたっています。また、施設内で勉強会や研修も盛んにおこなわれ、知識や技術を共有し、実践に役立てているそうです。
ちなみに松田さん、昨年は認知症ケア委員会だったそう。

--ところで「女性が多い」と山本施設長からもうかがいましたが、職員さんの男女比はどのくらいですか?
「女性が圧倒的に多い職場です。男性職員7人。でもやりたいことは自由にやらせてもらってますし、主任や副施設長にもすぐに相談できてますので 窮屈さを感じたことはないです。」

現場や委員会を通じて日ごろからコミュニケーションが取れているからこそ、お互いのことがわかり、相談できる環境が出来上がっていることがわかります。
とはいっても仕事である以上、失敗したりイラっとしたり、そういう感情は誰でもあるもの。また、ご家族との関係は。少し突っ込んで質問させていただきました。

「中学生の息子と娘がいますが、家族仲は良い方です。
でも、今の家族関係になれたのは、施設長のおかげもありますね。」

--何かのきっかけがあった?
「そうですね。数年前までは仕事仕事仕事…で『また残ってるね。』ってよく言われてたんですけど、たまたまいじめの話になったとき、何の気なしに、『困ったときお父さんやお母さんに相談できる?』って聞いたら、『いやできない。』って答えが返ってきて。

怒られるかもしれないから、とか言いづらいから、とか、子どもの口からそんな言葉が出てきたんですよね。
その時ちょうど施設長との面談で『仕事より家族との関係のほうが“愛のタスク”(※)難しいんだぞ。』なんて言われてたのが心の中でバチーンってはまって。
ああ、こりゃあ子どもたちを一人にさせてしまうなあって気づいて、子どもにもベクトルを向けるようになりました。ガンガン怒ったりするより、まずは『聞く』ってことを大切にしたら、家族に対して腹立つことも減ったし。
(ここ強調してくださいよ、と前振りのあと)施設長のおかげで!!
今のところは、ワークライフバランスはよくなったんじゃないかなって思いますね。
現場で学んだことや、施設長との話が家族との関係にもいい方向にいってるんだと思います。
家庭を大事にできないと仕事もおろそかになるなって気づきました。」

こういった前振りができるのも、施設内での人間関係が円滑だから。
そして、ここでも介護理論が自分ごととリンクする、山本施設長の声掛けが活かされています。
(※愛のタスクとは…アドラー心理学で提唱されているライフタスクの一つ。詳細な説明は割愛しますがこのタスクの達成には、“お互いを尊重する” “お互いを必要とする” “お互いを守る”などが必要だとされています。)
改めて…いい職場です!
松田さんありがとうございました。

おばあちゃんっ子が飛び込んだ「介護」の世界
~吉田雛琳さん(2017年入社 職員歴3年)~

続いては専門学校から新卒で入られて3年目になる吉田さんです。

吉田さん

--先ほど、委員会活動が盛んだという話を聞きましたが、吉田さんは今年度、どの委員会に所属されていますか?
「緩和ケア委員会に参加しています。委員会では『看取りに関する勉強会』を企画して、特定の利用者さんへの事例を考えるなどの勉強をしています。みんなで共有できるように発表するための資料を作成したりもします。」

--3年目というのはどういう年ですか?
「仕事にも慣れ、楽しさも辛さもわかってきたところです。でも、人とかかわることが好きなので、楽しいと思うことのほうが多いですね。」

--人とかかわる仕事、と一口に言っても様々な職種があると思いますが、高齢者介護、という今の職種を選ばれたのは?
「高校生の頃、祖母がなくなって、その時介護の仕事は知らなかったんですけど、その親戚の集まりで、『おばあちゃん、あんまりデイサービス行きたがらなかったんだよ』って話を聞いたのがきっかけです。そこで初めて、介護ってなにも知らないなと気づいて、いろいろ調べ始めました。そこからインターンシップなどにも参加する中で、職業として意識するようになりました。介護の仕事をするなら、資格とかもあったほうがいいよって勧められて、専門学校とか短大とかを探して。しゃくなげ荘には実習で来ていました。」

--おばあちゃんっ子だったんですね。
「両親共働きだったので、幼稚園のあとずーっとおばあちゃんと過ごしていたのもあって、大事なおばあちゃんだったです。」

--やってみたら体力もいるし、これはしんどかったなってことは?
「担当の利用者さんがくも膜下出血になっちゃって一気にトントントーンって悪くなっちゃって。まだ今入院されてるんですけど、結構しっかりされている方で単語ではしゃべれるようになったんですよね。でも、栄養はつながってて口からご飯も食べられないし、病院ではミトンつけてるっていうのを聞くと、もっと早く気づいてあげられたらなあって。しっかりしてる分、目が届いてなかったのかなあって。」

--特別養護老人ホームということは、ここは「生活の場」だと思いますが、普段通り過ごせるように気を付けているところは?
「ここにいて『帰りたい』って思ってほしくはない。せっかくいるなら慣れた生活をしてほしいので、だから自分から声をかけにはいきますね。顔とか名前とか覚えてもらって、知ってる人、安心できる人って思ってもらえれば安心して生活してもらえると思うので。」

--コロナで面会制限などの影響はありましたか?
「結構ありますねー。午前中も『帰りたいよ』って訴える利用者さんがいて。『コロナだから帰れない』って説明するんですけど、認知症の方だと短期記憶が保てないので難しくって。 話を聞いてたりしていても、家族と会えないのはしんどいだろうなあーって思います。家族さんも辛いだろうけど、やっぱりご本人さんが一番寂しいと思います。オンラインでの面会も全員が全員できるわけでもないので。」

利用者さんの自慢の作品や名物ってありますか?と話題を変えたときに、
「あ、さっきちょうどもらったんですけど。」
と、ポケットからでてきたのは、秋っぽい配色がおしゃれな手編みのスポンジカバー。使うのがもったいないくらいです。

スポンジカバー

「普段からみんなに配ってくれる人なんですけど、これは数が限られてるのでしまっといて!って、ポケットに入れられました(笑)。」

お仕事に追われて、どうしても時間時間で区切られてしまう施設さんも多い中、利用者さんとの距離が近いですよね。関わっていくことが楽しいというのがここからも伝わりますね。

--23歳、三年目。これからのお仕事への希望・野望などをお聞かせください。
「今の生活、というか仕事には満足しているんですよね。充実しているというか。上に上がってしまうとあんまり関わる機会が少なくなっちゃうかなっていうのもあって、まだ三年目ですし、現場にいて利用者さんとコミュニケーションをとれていることに充実感を感じてます。 ただ、資格がほしいとかではなく、もうちょっと勉強したいな、知識はつけたいな、とは考えています。そうしたらもっとできることが増えるかなと思います。」

ここにいる人のことを一番に考えてらっしゃる吉田さん。マスク越しでもいい笑顔が伝わります。その優しさはきっと利用者さんにも大人気だと思います。
これからも頑張ってくださいね。ありがとうございました!


3号にわたり、鹿追のしゃくなげ荘様の魅力をお伝えしてまいりました。
「その人らしさ」「利用者本位」が浸透していることを肌で感じるいい時間をいただきました。