多世代交流型施設「みんなのお家だんらん」
多世代交流型施設「みんなのお家だんらん」
リニューアル間近!
秋田県鹿角郡小坂町は、かつては小坂鉱山などの鉱山資源で栄えたという歴史をもつ、人口4,986人ほどの町です。
回り舞台が有名な康楽館や小坂鉱山事務所跡などの歴史ロマン感じる国重要文化財を擁し、ブランド豚の飼育にも力を入れているなど、文化的にも資源的にも豊かな町。
この町の社会福祉協議会(以下 社協)の活動拠点として注目なのが「みんなのお家だんらん」(以下「だんらん」)です。
古民家風のたたずまいの玄関をくぐると大きな囲炉裏。実家に帰ってきたようなほっとする空間です。今年度、この「だんらん」がリニューアルすると聞き、コミュニティソーシャルワーカーで生活支援コーディネーターの對馬(つしま)ひろみさんにその構想を伺ってきました。
地域福祉の拠点目指して、立ち上がった
「だんらん」は平成23年にオープンした多世代交流型の施設です。
「ご自由にどうぞ」って苺がつまめる施設って、
なかなかお目にかかれませんよね。
多世代交流、生きがいづくり、子育て支援拠点、情報発信、といった多様な機能がコンセプト。
介護保険でいう「総合事業」が始まったのが平成29年ですから、地域づくりへの取り組みの速さに驚きです。
「通常だと国が一歩先にいってて、そこに行政→地域の行政→社協 にくるまでにタイムラグがあるじゃないですか。ああ、あれはそうだったのかって。
でも私たちは、行政と一体になってることで、時間短縮になるというか、きゅっとうまくいく。ちょうどだんらんが立ち上がったのも、『私たちが先行してやるんだ!』という時期でした。」と對馬さん。
「私たちは『やりながら考える』といった感じ。そして何か違うなって思ったら変えていくんです。もちろん思うようにいかなかったなっていうことも正直ありますけど、お互いに話をしながらやっています。」
小さい町だからできるのかも知れないですけどね、とはにかむ對馬さんですが、この町をよくしたい!という思いが伝わります。
「だんらん」が立ち上がり、活動をしていくにつれ、世の中の流れもそれを追うように変わっていったそうです。
「いまだと地域包括ケアシステムって言ってますけど、それが走り始める構想があった中で、居場所や多世代交流、住まいの問題といった地域の困りごとの情報提供してくれるひとがいて、ときには出かけて行って情報収集したり、現状を話し合ったり、という機会がこの町にはありました。そういう流れの中で、国の構想がおりてきて、さあやらないといけないという時期になったときにはもうすでに、ちょうどよく『だんらん』があったんです。」
さらに、立ち上げから10年ほどの時を経て、地域の人々のちから、行政、社協、が一体になってきたことを感じたとも。
「地域づくりも介護保険もお互いにつながっていくんだな、いろんなことが重なって今があるんだな、って思ってます。そういう意味では、地域包括ケアシステムを作るというのは、高齢者福祉的な定義で括るのではなくて、子どもの問題や障がい者の問題もかかわってくるということですよね。『これだけ』ではない関わりとつながりを作るということが大切だと思っています。」
地域福祉の拠点としてのさらなる進化。リニューアルする「だんらん」が目指すもの
こうして行政と福祉が一体となって地域福祉に力を入れてきた中で、その拠点としての「だんらん」の役割が増すとともに、新たな課題も見えてきたといいます。
例えば、一人暮らし男性の孤立化という問題。
地域支援コーディネーターや行政の方々と自治会を巡回していて、生活支援をしていく前段階としての「地域での居場所」を普及させていきたいという思いが広がる中、やはり「集まるにいい場所」というものに男性が来ない。将来を考えたときにこれではいけないという共通認識がずっとあったそうです。
そのほかにも時代の流れとともに課題も様々で、ここ1-2年、うまく回ってないなと感じる事業もあったとか。
そこへ加えての新型コロナウィルスです。
「だんらん」での活動をどのように続けていけばよいのかと思案していたところ、なんと行政からコロナ対策の交付金を活用し、「新しい生活様式」に対応できる拠点づくりに向けて再整備してみないかと提案が!
密を避けて今までのような活動ができるように、「だんらん」を地域福祉の拠点として改修しましょうーそれはまさに、社協と行政が一体で歩んできたからこその提案であり、小坂町全体が「だんらん」の存続を求めていることの証ではないでしょうか。
具体的な改修の構想としては、密にならないよう屋外のスペースを広げたり、アイランドキッチンを広げて、スペースを空けて調理ができるようにしたり、とにかく集まる人が安心して過ごせる居場所を作ることを第一に考えられています。
また、リニューアル後の事業の展開として、ひとり親支援という側面も強化していきたいという思いから、古民家風であることをあまり意識しすぎず、若い人も気軽に立ち寄れる場所を目指すそうです。
リニューアルはしますが、こどもから高齢者まで誰でも気軽に集まれる場所でありたいというコンセプトは変わりません。
- 子育て支援・こどもの貧困問題・こどもの未来事業
- 介護予防の事業業
- 生活支援
- 一人暮らし男性の孤立防止
こういった様々な事業と、地域主体の中間色の施設として、住民が自分たちで自分たちの地域生活や介護予防を考えていける拠点を目指します。
またこの改修には多くのスタッフが関わっていきます。
今回、職員の内部異動により、地域福祉のスタッフに子ども支援サポーターが増えたこともプラスになったそうです。そういえばなんだか、社協の事務所内にいる方々、皆さん生き生きしています。
「小さい社協なんで、一人一仕事になりがちだけど、この改修事業に当たっては、若いスタッフや男性スタッフも一緒になって考えているところが、スタッフ同士まとまっていて楽しみだなって思えます。」
なるほど、単なるコロナ対策の改修以上の効果がここにも期待できますね!
集わない ではなく どうやって集えるか
傾聴ボランティアのみなさんとの一枚。二列目
右端が對馬さんです。
改修後のイベントや活動の計画も構想が膨らみますが、やはり課題は「生身でつながるリスク」。
様々な思いや葛藤がある中、たとえば傾聴ボランティアは、国の緊急事態宣言の期間を除いては、継続して活動を続けてきたといいます。
集う人々にはそれぞれの思いや家庭の事情があり、しばらく顔を出せない方もいらっしゃいましたが、ひとたび会うことができれば「待ってたよ」「元気だった?」と声を掛け合い、元気になれたとのこと。
そのエピソードにはやはり「集う」大切さを感じます。
一方では、HPやリモートなどの方法を駆使しながら「つながる」ことを意識した取り組みも。
「つながり方」も多種多様。
その中でどうやって集えるか。
いかに生身でつながることができるか。
確かに、集うリスクと孤立して元気がなくなるリスク
どちらも大切にしなければなりません。
「バランスに配慮しながらの運営は大変だと思いますが、まずはやってみるしかないですね。」
と、あらためて「やりながら考える」小坂町らしさを見せてくださった對馬さんでした。
多様な事業展開やわくわくするイベント。リニューアル後もさらにパワーアップして地域の皆様の活動を支えてくれそうです!期待が膨らみますね。
【リニューアル最新情報】
改修工事がいよいよ11月9日から始まったそうです。
リニューアルオープン予定は2021年1月4日!いよいよですね。
【編集後記】
「中の設備、たとえば囲炉裏にしても、今まで有効活用できてたかな?と振り返ることもできて、この改修のお話はこれからの事業の見直しも含めて色々考えるいい機会になりましたよ。」と話して下さる對馬さんの前向きさに、リニューアル後の「だんらん」の活動は絶対に成功するに違いないと確信しました。楽しみに待っています!
【施設情報】
社会福祉法人小坂町社会福祉協議会
〒017-0201 秋田県鹿角郡小坂町小坂字上前田7-1
「みんなのお家 だんらん」
小坂町小坂鉱山字栗平19番地12