BRAIN DRIVEN

「昔よりも明らかに脳の働きがゆるい」そう感じることはないだろうか。
私は、ある。大いにある。
この状況を打破できることを願い手に取ったのが、今回ご紹介する「BrainDriven」である。

結論から言おう。

この本は普通のハウツー本ではない。
そのことは作者自身も冒頭で述べており、一方通行で人からやり方を教わってもほとんど効果が生まれないということを説いている。
確かに、性格も興味もばらばら、みんな違ってみんな良い、というこの世の中、脳へのアプローチも人によって違うのは言われてみると当然なわけで、様々な経験をし、満を持してハウツー本を出した方と、自分自身がうまくいく方法がイコールとは限らない。

また、この本が一貫して言っているのが「Use it or Lose it」の法則。つまり、脳はどんな機能であれ「使えば強くなるし、使わなければ無くなる」ということ。
そりゃそうだ、と腑に落ちると同時に「老化のせいにして逃げてはいけない」と気づかされる原則でもある。

前置きはさておき。

この本のトピックは3つ。「モチベーション」「ストレス」「クリエイティビティ」である。
今回は特に「ストレス」について取り上げてみたいと思う次第。

ストレスがパフォーマンスを高めることもある

「ストレス」と聞くと一般的に悪いイメージや避けたほうがいいものというイメージがあるが、実は適度なストレスは良いパフォーマンスを生み出すということが書かれている。
脳にストレス反応が起こると、記憶定着率が高まり、学習効果が高まるという。日常、ぼーっと仕事をするよりも、期日やノルマなど一定のプレッシャーがかかった状態のほうが、パフォーマンスが良かったという経験はないだろうか?

また逆に、成功や意見が得られてポジティブな感情が出ているときに、その成功の前にあった失敗(ストレス)を同時に結び付けると学習効果が高まる。よく「失敗から学べ」といわれるが、まさにこのことを指している。
成功したときこそ、そのプロセスで経験したストレスや失敗を思い出す。この行動により、次に壁にぶつかったときのストレス対応、前を向くためのモチベーションを脳が学んでいくといわれている。

ポジティブにストレスを受け入れ、パフォーマンスを高めることができるようになりたいものだ。

逆に、避けるべきストレスとは

一つ目に筆者があげているのが「やりたいこと、やろうとしていること以外から受けるストレス」。
「新しい企画を立ち上げたい」と思うときに「よくわからないダメ出しをする怖い上司の顔が思い浮かぶ」としよう。
意図せぬところで望まないストレッサーが働くことでパフォーマンスが下がるというのは非常にもったいない。
自分に課すストレッサーは自分で選択できたほうがよい。
このことを踏まえ、管理職である自分は「よくわからないダメ出し」をしていないかと、内省するいい機会にも活用したい。蛇足だが。

二つ目と三つ目は想像がつくだろう。
「過剰なストレス」と「慢性的なストレス」だ。
これらのストレスがある状況だと感じたら、まずその場を離れ、「Use it or Lose it」で「感じない」生活を心がけることが肝要であろうと思う。
なお、ストレスを感じるレベルや反応具合についても一人ひとり異なるため、「自分がどのような状況におかれた場合にストレス反応が大きく出るのか」を客観的に見極めておこう。
それこそが自己成長の大きな軸になる、とも筆者は教えてくれている。

違和感やモヤモヤは成長している証拠

「なんだかよくわからないけどモヤモヤする」という経験があると思う。
曖昧であるが故に見過ごしてしまったり、考えることをやめてしまったりするのはもったいない行為であり、新たな発見の機会を逃しているかもしれないんだそうだ。
筆者はこの状態を、言語的に説明される以前の状態から脳が発信しているシグナルであると説明している。
とすると、違和感をないがしろにせず、大切な情報を伝えてくれる可能性を信じて注意深くその探索を楽しめるようになると成長できそうだ。
このモヤモヤした感覚は今、脳が学習しているサインだとポジティブな感情で受け入れるようにしたい。

これは対人関係でも同じこと。モヤモヤしたり葛藤したりしている同僚や部下がいたら、曖昧だと切って捨てたり見放したりせず、成長機会を見守りたい。もしあなたが解を持っていたとしても、過保護に先回りして教えてしまうのではなく(※時と場合によるが)、モヤモヤが整理され、その人自身が意思決定できるようサポートできれば、全体価値もさらに上がるというものだ。

まとめ

冒頭で結論として述べたが、すべての人に当てはまる法則はない。脳の働きについても同じことで、自分に合った生活の仕方、自分にあった脳の使い方は人それぞれ。その動きに興味をお持ちの方はぜひこの本をお手に取っていただきたい。脳の仕組みを合理的にとらえたうえで、「それで、自分は?」と考えるのに役に立つはずだ。

「Brain Driven ~ パフォーマンスが高まる脳の状態とは ~ 」
青砥瑞人(アオトミズト)著
ディスカヴァー・トゥエンティワン社刊