地域のものづくりを支え続ける「縁の下の力持ち」
~北海道職業能力開発協会~

職業能力開発協会は、 職業能力の開発促進、職業能力の評価の実施、技能の尊重と振興などを積極的に推進するために設立された団体(認可法人)です。
特に、ものづくり現場では人材不足と若年者の技能離れが叫ばれて久しく、こういった問題解決にも職業能力開発協会が一役買っています。
様々な技能を必要とする業界や企業とも連携し、地域のものづくりを陰から支える、文字通りの「縁の下の力持ち」の存在です。
技能五輪のニュースなどでご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
また、近年では外国人実習生向けの技能向上の事業も盛ん。 日本のものづくりの技術が海を越えて海外へ伝わっていくようになりました。
今回は北海道職業能力開発協会様を訪問し、お話をお聞きしました。

新型コロナウィルス襲来!
ものづくりを支える協会が立たされた苦境

令和二年度を振り返るとき「新型コロナウィルス」という言葉を避けては通れません。
全国の前期技能検定試験が全面的に中止になり、 北海道のものづくりを担う人々にもその影響は降りかかりました。
「3月1日に告示をして、 2,000人余りの各受検手数料をいただいていたのですが、 試験開始の1週間前に中止が決まりました。 結局、令和二年度の前期試験はすべて中止になりましたので、 そこからの受検料の返還作業の作業量が膨大なものでした。 すべてが終わるまでにはかなりの時間がかかりました。 この仕事に携わって20年以上になりますが、検定が全面中止というのも、こんなにたくさんの返還作業をしたことも、どれも初めてでしたね。 」
と、西岡次長。

ものづくりの技能を高めようと意欲を燃やす方々、そして支える職業能力開発協会への打撃はこれでは終わりませんでした。

実は北海道職業能力開発協会は、全国的にも珍しく、協会自体が自治体の指定管理を受けて実習や検定に使う会場(支援センター)の管理もしています。技能検定には設備も必要ですのでこれは貴重な場所です。

しかし、緊急事態宣言を受けて、共同で管理をしている札幌市が休館を決定すると、その余波として研修や講習、試験など様々な利用のキャンセルが相次ぎました。
更に、社員の安全確保のため、企業側が技能試験委員を派遣できないという事情も。
建物はあるのに使えないという状況が続き、貸し館収入が激減しました。特に緊急事態宣言中の3月から5月の収入は例年の1/3に落ち込んだそうです。
収入は落ち込む、職員の事務作業は増える。不安な中で令和二年度の前半が過ぎていきました。

後期試験は実施も、あらたな課題が。

その後、後期試験は新型コロナ対策をしながらなんとか実施できることとなりました。
まずは、会場の確保です。密を避けるため、従来に比べて定員二倍換算に教室を増やします。
そうすると当然に、部屋代が増え、部屋が増えれば試験監督員の増員も必要となります。
また、飛沫対策としてのパーテーションの準備と設置も、想定外の支出です。
協会の持ち出しがこのまま増えていく一方だったら…と危機感はぬぐえません。
「無事に後期試験が実施できたことは、とりあえずはよかったけれど」 と専務理事。
「令和三年度以降の試験も、我々としてはできれば受検の機会をなるべく提供したいと思っていますが、この調子で行われるとなると、会場の問題もそうですけれど、技能検定委員の負担が大きくなるのも問題になります。」
そうなのです。技能検定はものづくりやサービスに関する検定ですから、当然学科試験だけでなく、実技試験が伴います。そして、それぞれの職種別の技能検定委員のほとんどが、本業を持っている上で、技能向上のためにこの任を引き受けてくださっている方々ばかり。
新型コロナ対策で密を避けるため、試験日を分散した結果、今まで2日で済んでいた拘束日が倍に増えたりすることもあるそうです。
果たして本業をお休みして、そこまで検定試験に時間を割いてくれるのか、という新たな問題が生じます。
国が示している技能検定は現在130種(職業能力開発協会が実施しているものは111種)、うち北海道でも85職種の技能の育成を行っています。その職種は多岐にわたり、機械加工や建築大工といった技能から、レストランサービスや着付け、など様々。
各業界団体、公共職業能力開発施設、技能検定委員の協力がないと到底成り立たないのですが、この先、課題が解消されないと検定そのものが実施できない事態もあり得ます。
確かに、技能検定を取らないと仕事ができないわけではありませんが、自分の実力の指標にもなりますし、技術の研鑽を積んでいく励みにもなるでしょう。
また、技能検定の認知度が高まるにつれ、技能士がいることが要件になったり、単価が上乗せになったりすることもあるそうで、ますます注目度が高まっている中、ものづくり魂が続くよう、早期の課題解決がのぞまれるところです。

コロナに負けない!
これからの日本のものづくりを支える若者へのメッセージ

さて、未来のものづくり人材を育成するのも、職業能力開発協会の大切な仕事。
ものづくりの楽しさを実際に味わってもらい、将来の可能性をひろげるため、毎年行っているのが厚生労働省受託の若年技能者人材育成等事業「ものづくりマイスター制度」です。
ものづくりマイスターに認定された熟練技術者が派遣され実技指導を行ったり、ものづくりの体験をさせてくださったりします。
これは実際に体験をしながら間近に職人技をみることができる貴重な機会ですね。

令和二年度は、緊急事態宣言解除後、徐々に活動を再開しました。令和三年度も引き続き実施の見込みとのこと。熟練の技に触れる機会が楽しみです。
育成事業の一環として、「技能五輪全国大会 ※注1」も毎年開催されており、北海道は特に家具、建具の分野での活躍が目立ちます。育成事業が実を結んだ好例と言えるでしょう。

また、現専務理事は前職が高等技術専門学院の学院長でもあり、工業高校を含む専門の教育機関の認知度向上についてもお話くださいました。
「世の中にはどんな仕事があるのか、若者が実際に目で見て肌で感じ、体験することが少なくなってきているように思います。職業能力開発協会としても、 まだまだ技能の振興に手が回っていないのが現状ですが、将来の進路選択のひとつとして『ものづくり』がうかぶように、そのためにも『触れる機会』を増やしていけたらと思っています。 」

小さな力ですが、我々も皆さんに知っていただくお手伝いができたらと思っています。
貴重なお話をどうもありがとうございました!

※注1)技能五輪全国大会とは…国内の青年技能者(原則23歳以下)を対象に、技能競技を通じ、青年技能者に努力目標を与えるとともに、技能に身近に触れる機会を提供するなど、広く国民一般に対して技能の重要性及び必要性をアピールし、技能尊重気運の醸成に資することを目的として実施する大会であり、昭和38年から毎年開催されています。幅広い職種を対象とする、唯一の全国レベルの技能競技大会です。偶数年度の大会は、翌年に開催される技能五輪国際大会〈唯一の世界レベルの技能競技大会(隔年開催)〉の選手選考を兼ねています。
(中央職業能力開発協会ホームページより抜粋)

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