春だ!アートだ!ゆうあいアート展②
日常の活動から生まれる豊かな世界
作品のジャンルもバラエティに富み、作品の数もたくさんである秘密に迫りました。
まずお邪魔したのは新生園。19歳から75歳までの、多様な年代の方が暮らしています。
ここには焼物の窯がありました。
粘土を捏ねる人、ちぎる人、丸める人、日中活動の中で利用者が思い思いに形を作り上げていきます。
失敗した粘土を粉にして再生粘土として再び作品が作れるように作業してくれる人もいます。
テキスタイルのような緻密な絵を描いている人もいます。
ここからお地蔵さんが出来上がっていきます。 |
|
人形がたくさん! |
|
換気をして、一生懸命再生粘土を作ってくれる方も。 |
ご姉弟で作られた大作。 |
それぞれのペースで日中活動をするのが、長年のスタイルです。
そして、とてつもない集中力で手仕事に没頭する利用者を、職員が体調との兼ね合いも考慮しながら見守ります。
集中しすぎて発作につながったりしないように、さりげなくフォローできるのは、普段から職員が一人一人の様子に目を配り、変化を見逃さないからこそ。
それにしてもこの焼物の仕上がりには惹きつけられます!
聞けば、職員は陶芸のプロではなく、ここにきてから独学で学ばれたのだとか。
陶芸体験などされたことがある方はお分かりかと思いますが、陶芸活動で形になるものを作る、それをサポートする、焼き上げる、というのは、そんなに簡単にできることではありませんよね。
それもすべて、利用者の多様な活動を支えたいという熱意ゆえ。
「指導する感じではなく、見守りながら、その人がしたいことのお手伝いをしています。 」
と、支援員の村山茂一さん。
年に数回ある作品展示会で購入することができる作品もあります。 |
|
コロンとまるい形と優しい色合いが可愛らしいこちらは、マグネットと押しピン。 |
敷地内には作品のギャラリーになっているかわいらしい小屋もあります。
この小屋も職員が組み立てたもので、中に入ると色鮮やかな作品がたくさん並んでいます。共同募金会の賞をいただいた作品などもあり、見ごたえは抜群。窓からこぼれる光に照らされた珠玉の作品たちがキラキラと何か訴えかけてくるようです。
ギャラリーの看板と出迎えてくれるオブジェも焼物で作られています。 |
|
細やかな筆致に目を奪われます。 |
「アート」と意識しなくても、いつもそばにアートのある日常
さて、場所をすこし移動し、次に伺ったのは「ワークセンターほくと」。こちらの活動場所に案内され、一歩足を踏み入れると、思わず「わぁー」と感嘆の声が漏れてしまいました。
色とりどりの作品たちが壁一面にズラリ。
食堂や作業場所にもあちこちに作品が飾られています。
「施設長が見せ方をいろいろ工夫してくれるんですよ。 」と菅野紀子課長。
編み物が得意で、おうちでも取り組まれる方も。 |
あれ、よく見ると菅野課長の名刺に描かれているこのかわいらしいキャラクターも…?
「そうです。 『ワークセンターほくと』 のシンボルキャラクター 『ほっくん』 です。これも、ここに通っていた方が描いたものです。 」
作者の丸山さんは他界されてしまいましたが、 丸山さんの 「ほっくん」 は、「ワークセンターほくと」 のシンボルとして、ずっと見る人を癒し続けてくれています。
小黒康廣施設長は近年の侑愛会のアート活動の先陣としてご活躍とのこと。その施設長をはじめとして、こちらの職員の方々も、様々な勉強会に参加して新しい創作活動のヒントを得たり、見せ方を工夫したりしながら、利用者の「その人らしさ」に焦点を当てた活動を続けています。型にはめるのではなく、一人一人を大事にしていることが、伝わります。
この日は、たわし、綿棒、新聞紙などが用意されていました。 |
思い思いに絵の具を付けて紙の上を滑らせていくと… |
写真が光ってしまいましたが、 |
「作品」としてだけではなく、機能訓練も兼ねた「商品」作成に取り組んでいる方もいらっしゃいます。
こちらのアクリルたわしは、織機で丁寧に織られたもの。これでお掃除したら気持ちが明るくなりそうな、素敵な色合いです。
あまりに可愛いので、お掃除に使うのがもったいないような気持ちにもなりましたが、せっかくなので実際にお掃除してみました。面がポコポコしているので、シンクのくもりをキャッチしてくれ、あっという間にシンクがぴかぴかになりました!
こちらの商品は「ハーベスト」でも購入が可能ですので、ぜひどうぞ。
★からだにやさしいパンの店 ハーベスト
〒049-0121 北斗市久根別3丁目207
(定休日 日曜・月曜)
アートは表現の一手段
前回に引き続き、函館青年寮の小谷高大施設長にお話をうかがっています。
「ご覧いただいた『ワークセンターほくと』 や 『新生園』、『明生園』 などは、事業所としてチームで創作活動ができる事業所です。
ただ、私たちは『アート』にこだわっているわけではなく、これらの創作活動はあくまでの表現の一手段です。私たちが忘れてはいけないのは、障害者だからみんな芸術家ではないということで、やはり、得意不得意があるということ。 それも含めて『その人らしさ』をみつけて、何か熱中して、好んで、作業をできればいい、そう思っています。 」
私たちが普段こだわらないようなところに着目したり、違う視点で観察したり、そういった一人一人のこだわりを尊重した上で、利用者と関わり、スパイスを加えて作品として昇華させるのが職員の役目だとも。
近年のアールブリュットは障害者アートとイコールで定義されがちですが、「障害者」というくくりを超えて、今、私たちにも多様な視点の大切さを語りかけてくれているように思いました。
今後もそんな気づきの機会を期待しています!
侑愛会のご紹介、まだまだ続きます。
次回は、手仕事が商品となった「明生園」の「とうもろこし人形」をピックアップします。