春だ!アートだ!ゆうあいアート展③

素材は身近に、作品は無限大

新生園と対の施設として、女性向けの入所施設として設立されたのが 「明生園」。
ここでは 「とうもろこし人形」の制作が行われており、北海道新幹線の新函館北斗駅構内にあるアンテナショップ 「ほっとマルシェおがーる」や、トラピスチヌ修道院の売店でも購入ができるものです。

懐かしさや素朴さが感じられるこのとうもろこし人形は「明生園」の看板商品で、永年愛されてきた歴史あるもの。制作指導をする五十嵐さんも熟練の技をもった大ベテランです。

日中の作業活動にあたってきた利用者も、熟練の技をもっている方がたくさんいらっしゃいましたが、高齢化で人数が減っていることが今後の懸念とのこと。
お邪魔した日は、人形の頭になる部分の作成や、飾りの紐の作成が行われていました。
ひとりひとりのその日の体調も見ながら、作業にあたります。
「商品」として作るため、パーツをたくさん作っても全部を使えるわけではありませんが、皆さん一生懸命に取り組まれています。
女性ばかりの工房ということもあり、おしゃべりしてくださる方や作り方を教えてくださる方など、なんだか和気あいあいとした雰囲気。

これくらいツルツルに丸めないと商品にならないそうです。繊細な作業です!

さて、とうもろこし人形制作話に戻りましょう。
ひとつのとうもろこし人形を作るのに、なんと40枚分ものとうもろこしの皮が必要になるそうで、収穫の季節になると、あちこちのとうもろこしの直売所やスーパーへトラックで赴いて、材料となる皮を仕入れに行きます。
そして、このとうもろこしの皮も、仕入れたものすべてが使えるわけではありません。
まず、外側の硬い皮は使えませんので、中の方の柔らかいものだけを使います。

破れているもの、色が変色しているもの、実の跡がついてしまっているものなども、人形の中の方の芯に使うか、製品にならないものとして破棄されます。
一本のとうもろこしから、2-3枚使えればいい方だというのですから、とてつもない手間と、いい人形を作るためのこだわりがあるかがわかりますよね。
これらの皮は一度天日干しをして、使う分をまた煮沸してから使います。乾かしている間に虫がつくこともあるためです。
材料の選別や、人形としての形になるまでの技は予想通り熟練を要し、5-6年いる職員でも満足いくものが作れることが稀とのことです。
沢山の工程を経て出来上がったとうもろこし人形の愛らしさ、一度お手に取ってみていただければと思います。

とうもろこしの皮で作ったリースもあります。

裏の山のどんぐりも宝物

とうもろこし人形のほかにも、明生園ではどんぐり人形の制作も。
「どんぐり工房」の看板は、加藤正明副園長の手作りです。

「ここの林ではどんぐりがいっぱい採れるんですよ。これを活かさない手はないと思って。 」
工房の玄関にも、入り口にも、沢山のどんぐり人形が飾られています。
ここでも「その人らしさ」を大切にした活動を模索する、侑愛会らしさが生きています。

ころんとしたかわいいフォルムのどんぐりたちが、明生園の生活に優しい彩りを添えています。機能訓練も兼ねて始めたこの人形制作ですが、今やなくてはならないシンボルキャラクターにもなりました。

まだまだひろがる 侑愛会のやさしい世界

3回にわたり、主にアートに焦点をあてて侑愛会の活動をお伝えしました。
侑愛会の職員の方々は口々に、「その人が表現したかったものを、いろいろな方法としてサポートしたらこんな形になったのです。」 とおっしゃいます。
そのサポートのお陰で、私たちも表現者としての感性の豊かさがあふれている作品の数々を目にすることができます。
今回はいくつかの施設にお邪魔させていただきましたが、どこも共通して、やさしい世界が広がっていました。

私たちの目をひきつけてやまない、とてつもない魅力を持つ侑愛会の表現者たち、その活動はこれからも広がっていくことと思います。
また折に触れ、紹介の機会をいただけることを願っています。