一緒に成長しようが合言葉「合同会社クルポッケ」

近年、障がい者サービスも増えてきましたが、それでも障がい者向けのケアマネージャーはまだまだ数がたりていません。
今回は、音更で先駆的に相談支援事業所を運営している 合同会社クルポッケの代表、久保明さんを訪ねました。

まずは久保さんのご紹介。

久保さん

久保明 略歴
東北福祉大学卒業後、故郷帯広を中心に20年以上にわたり障がい者福祉に携わる。
平成25年 合同会社クルポッケを設立。
指定居宅介護支援事業所 結おとふけ
指定特定相談支援事業所 敬おとふけ を運営。
介護支援専門員、相談支援専門員、社会福祉士。

今日もみんなが「自分らしく」生活できるために奔走中。

一昔前は、まだまだ障がい者が地域で暮らすことが一般的ではないご時世でした。
そんな中、帯広市や音更町では、施設が中心となって地域に積極的に障がい者を出し、人それぞれの暮らし方を支援してきた背景があり、先駆的な自治体であったともいえます。
しかし支援の手や社会資源は潤沢とはいえず、地域で暮らしたいけれどもままならない、という当事者もたくさんいます。
そこで、その人たちの一助となれば、と久保さんが立ち上げたのが「合同会社クルポッケ」でした。
当時は障がい者に理解のあるケアマネージャーは珍しく、まさに先駆け的存在と言えます。
「手が足りないなら助けになろう」というあったかい思いは、会社名にもギュッと詰まっています。

アイヌ語で「クル」は「人」、「ポッケ」は「あったかい」の意味があります。
また、「ポッケ」はポケットともかかっていて、いろいろな相談ごと、お困りごと、人それぞれのお悩みごとを受けとめるポケットをたくさん増やしましょう、という意味も込められているそうです。
人はみんな一様じゃないから。
だからいろんなポケットで受けとめたい。

一緒に成長したいという気持ちが原動力

その思いはロゴマークにも。

ロゴマーク

デザイナーさんと何度も話し合い、クルポッケ設立の思いを熱く熱く伝えて出来上がったロゴマークは自慢のデザインです。
「相談という種をまき、一緒に成長しましょうという意味がこめられています」と久保さん。
支援を「してあげる」のではなく「一緒に」。
地域で暮らす仲間という気持ちもここに込められているような気がしますね。
手をつないでいる部分は、知恵の神様でもある「いるか」をモチーフにしているそうですよ。

…と、ここまで伺うと事業所名の「敬」「結」の語源も気になるところ。
尋ねてみるとやはり、あったかい思いがつまっていました。

私の母の故郷が岐阜なんですけどね。岐阜といえば世界遺産にもなった白川郷の合掌造りが有名ですよね。あの合掌造りの茅葺屋根を維持していくには、技術と伝承の技が必要なんだそうです。そこで、昔からの「結」という相互扶助の組織が機能していて、巣立っていった子供や孫たちも、夏の里帰りのときなどにはみんなで力を合わせて作業する習わしになっているというエピソードを聞き、感銘を受けました。我々の事業所も助け合っていける存在でありたい、と。そこで『結』という名前をつけたんです。

『敬』はね、障がい者から学び、その人を敬う気持ちを込めてつけました。

障がいのある人への気配りは、名刺のデザインからも感じます。
困ったときにすぐに電話できるように番号を大きく、手元に置いていてもすぐわかるデザイン。
久保さん自ら何パターンも作成し、常に当事者目線での支援を考えていらっしゃいます。
お守りみたいな存在です。

名刺

相談支援事業にもひろがるオンライン、その一方で。

いまや、新型コロナウィルス感染予防の観点から、施設や病院から面会制限がかかることも、受け入れるべき日常となりました。
当事者と接することから始まる相談支援事業にもその影響が及び、今ではオンラインで面談や相談を行うことも普通に。
生で接することができなくても、齟齬なく困りごとを掬えるようにと、クルポッケでもタブレットやSurfaceを導入。顔が見える分、電話よりも様子がわかりやすいそうです。
こうして丁寧にお一人お一人に向き合う姿勢は変わることなく、聞き取りや約束事はメモにメモを重ねてとりこぼしのないようにしています。
おかげでスケジュール帳は常にびっしり、真っ黒です。
「アナログだけれど、ここは手で確認するほうが確実だから。」と、両方のツールをバランスよく使いこなされています。
同じように、弊社との遠隔サポートも評価してくださる久保さん。
「遠くても、いつも親切に見てくれるし、困ったらすぐに助けてもらえるからね。これは本当に助かりますよ。」と嬉しいお言葉をいただきました。

わたしたちも、便利なものを、より心を通わせるためのツールとして、バランスよくとりいれながら、つながりを大事にしていきたいと改めて感じました。

興味深いお話をお伺いしているうちに時間はあっという間に過ぎ、最後はちょっと慌ただしく辞去しましたが、この原稿をおこすにあたり脳裏に浮かぶのは、笑顔の素敵なスタッフとともに、今日も「誰かのために」と奔走する久保さんの姿と、音更のきれいな青空なのでした。