障害者アートがもっと楽しめる♪ギャラリートーク報告
さて、前回に引き続き北海道障害者のアート展についてお伝えしましょう。 今回は、ギャラリートークの模様をレポートします。
アールブリュットって、なに?
まずは今回の講師の方々ののプロフィールから(ギャラリートーク紹介のFaceBookページから引用させていただきました)。
堀川真(ほりかわまこと)
1964年、北海道出身。名寄市立大学社会保育学科教授。絵本作家。絵本や挿絵の仕事のほか、知的障がい者更生施設における療育活動や子どもとのワークショップにかかわってきた。主な絵本に「あかいじどうしゃ よんまるさん」(福音館書店)、「おべんとうさん いただきます」(教育画劇)、「私の名前は宗谷本線」(あすなろ書房)、「たぶん、なんとかなるでしょう。」(福音館書店)がある。
『けんぶち絵本の里大賞 びばがらす賞』を「北海道わくわく地図絵本」(北海道新聞社)などにて複数回受賞している。
菊地雅子(きくちまさこ)
1965年、千葉県出身。多摩美術大学染織科卒業。
28歳の頃に東京八王子の精神障害者通所施設にてアート指導を始める。
結婚出産を経て、北海道に移住、2020年まで当麻町社会福祉法人かたるべの森にて創作活動アドバイザーを行う。
2017年より4年に渡り北海道新聞に毎月「アール・ブリュットの魅力」という題で道内の作家の紹介記事を書く。
2020年よりフリーランスとなり、道内福祉施設や幼稚園で創作活動のサポートやアドバイスを行う。ボーダレスアートサポート北海道(BASH)の代表。
ギャラリートークのオープニングは、堀川さんのお話から始まりました。
堀川さんとアールブリュットとの出会いは、社会福祉法人鷹栖共生会の施設、ファミリーセンター大雪の園に招かれたことにさかのぼります。こちらの施設では、療育活動としてアートを取り入れる活動をしており、堀川さんは絵本作家という立場から支援に携わりました。
・障がい者美術
・アウトサイダーアート
・ボーダレスアート
など、障がいを持つ方の創作活動に対してはいろいろな呼び名がありますが、現場で長年利用者との活動に関わってきた堀川さんからすると、「やっているうちに言葉がやってきた」という印象が強いそうです。
国際的には「アウトサイダーアート」という言葉が主流だそうですが、日本では「アールブリュット」という言葉の方が浸透しているのも、日本には日本でのアートの関わりがあるからなのでしょう。
印象深いエピソードは沢山ありましたが、この記事を読んでくださっている方に端的にお伝えしたいのが、堀川さんの今現在のアールブリュットを含むアートの定義づけです。
それは
「ぐっとくる」ということ。
創作する人も、見る側の我々にも、価値観の変化は起こりうるもの。そしてその価値観の変化に気づかされて驚くこと、それが「ぐっとくる」という一言に凝縮されていると感じました。
なので明日になったらこの定義づけも変わっているかもしれない、という堀川さんの言葉にも更に「ぐっと」きたのでした。
やはりそこにあるのは、信頼と共感だった
つづいて、菊地さんが、長年のかかわりの中で気づいた、創作のいろいろな形をタイプ分けして紹介してくださいました。
好きで創作している方はもちろんのこと、
そのテクスチュアが好きだから取り組む方、
創作することで救いを求める方、
などなど…
深くかかわっているからこその細やかなカテゴリ分けもまた、変化するアートたる所以を感じました。この先、またかかわりの中でカテゴリが増えることもあるのかもしれません。
もちろんカテゴリ分けだけで話が終わるわけではなく、魅力的な作品の解説を交えながらの軽妙なトークは続きます。
社会福祉法人かたるべの森で創作アドバイザーとして向き合ってきた菊地さんですが、
「今でも、どうにかしたいけれどどうしてもわからないことがよくあります。」とのこと。
そんなとき必要なことは、“変化する途中のところを邪魔しない寄り添い方“ だそうで、ひたすら「待つ」ことを求められているのだとおっしゃっていたのが印象的でした。
「待つ」ということはつまり、見守る支援者と創作活動をしている当事者の間に信頼関係がないと成り立たないということです。
「だからこそ、現場はいつもドラマチックなんですよ」
という言葉にまたも「ぐっと」きた会場の方々は、きっとこの日のギャラリートークを経てますますアールブリュットの魅力にはまっていくことでしょう。
そして、北海道のアールブリュットの世界は今後ますます広がりをみせてくれることでしょう。
進行役の大友さんも交えながらのギャラリートークは尽きることなく続き、気が付けばあっというまに終わりの時間となりました。
最後にちょっとだけ、つけたし
なお、今回魅力的なお話を聞かせてくださいました菊地さん、ご出版が決定したとのことでここでもちょっとだけお知らせします。
北海道のアートの未来を照らせる1冊になったら、と菊池さん。
刊行を心待ちにしています!