地域の健康を守る まつもと薬局 Vol.1
北海道東部、十勝地方の中心のまち帯広市で、地域の健康のために今日も頑張っている会社があります。
それが今回ご紹介する「まつもと薬局」です。
まつもと薬局の創業は1983年。薬剤師でもある現社長松本健春氏が立ち上げ、帯広市内に5店舗、鹿追町に1店舗を展開しています。
地域の薬局として営業するだけではなく、栄養部門やリハビリ部門も有します。
患者第一主義をモットーに、チームまつもととして十勝の健康を支えている各部門のスタッフにお話を伺いました。
まずは薬局業務の要 薬剤部
まつもと薬局の薬局業務の主軸となるのが服薬指導。単に処方箋通りの薬を調剤するだけではありません。
きちんと薬を飲めているか、この薬でよいのか、ということを、患者一人一人に話を伺い、観察をしています。南町店の管理薬剤師として勤務する曽根義貴さんは、かかりつけ薬剤師として40名もの患者を受け持っているそうです。
お話の中で「ポリファーマシー」という聞きなれない言葉がでてきました。
これは、多くの薬を服用しているために、副作用を起こしたり、きちんと薬が飲めなくなるなど、多剤服用の中でも害をなすもののこと。
このような弊害を防ぐためにも、薬剤師さんの丁寧な聞き取りと考察は欠かせない仕事なのです。
▲ わかりやすく用語解説も交えてお話をしてくださる曽根さん。
日ごろから患者さんに寄り添ったお仕事をしていることが伺えます。
「副作用を抑えるためにどんどん薬が増えることもありますが、そうならないように根本の薬を見直したり、やめたりするという選択肢もあります。その見極めを医療機関と相談することはとても大切な仕事です。」と曽根さん。
高齢になると薬は増えていくものだと思い込んでいましたがそうではないのですね。
「むしろ、高齢になるといっぱいの薬は飲めないんです。服薬そのものが苦痛になってしまうこともありますし、適切な服薬ができなくなるということもあります。それを防いで、その方にあった形で提供していくことが肝心です。」
そこで、適切な服薬指導のため、最近普及しているのが在宅訪問という形です。
これは文字通り患者宅や施設に訪問して服薬指導をするというもので、ケアマネや医師が必要と感じた方のもとへ薬剤師が伺います。
これからニーズが増えてきそうなサービス形態ですが、まだ認知度は高くなく、特に帯広市はその面積の広さから、それぞれのお宅に行くのにも時間がかかるため、どの薬局もなかなか手を挙げにくいのが現状です。しかしこのような状況でも患者中心主義を貫き、地域のパートナーとして、個人宅への在宅訪問を請け負っているのがまつもと薬局。南町店でも現在6名の利用者を担当しています。
曽根さんは、こうおっしゃいます。
「ケアプランを考える際に薬剤師に入ってもらうという選択肢があるということをもっと知ってほしいですね。『薬のことは全部薬剤師に頼もう』と丸投げしてくれたっていいと思います。」
また、
「任せてくれれば総合的な服薬管理ができますし、おうちに行けば見えてくるものもあると思っています。例えば部屋の掃除一つとっても、そこから患者さんの生活が見えてくることが多いですよね。つまり、そのひとの状態がわかってくる。生活環境がわかるとそれに適した服薬管理も見えてくる。特に内科の薬は生活習慣によるものが多いので、例えば、血圧が高い方なら塩分や運動、糖尿だったら…、という複合的な理解と連携によって多剤服用を減らすこともできると思います。
高齢者のフレイル改善についても、薬局も介入することでより予防策を講じたり、遅らせることも可能だと思っています。」とも。
さらに、まつもと薬局は十勝地域の基幹薬局としての役割も担っています。
基幹薬局とはまた聞きなれない言葉ですが、在宅医療のために地域密着型の薬局同士が連携するための制度として設けられた制度です。厳しい施設基準をクリアし、フロンティア店に無菌調剤室を備えました。これにより、無菌調剤による在宅訪問を自局で行うだけでなく、共同利用の制度で地域の薬局による無菌調剤室利用を可能にしています。
基幹薬局として地域全体の在宅医療のさらなる発展に取り組むという使命の中、今後さらに注目されるのが終末期の在宅での看取りです。扱う薬剤の中には痛みを緩和させるための薬剤として扱いが難しいものもあり、一層の医療チームの連携が必須。急変の可能性も大きいので、ひとたび関われば通常の在宅訪問と違って24時間体制となります。
大変ではありますが、ご本人の思いに沿った形で最期を迎えられることは家族にとっても救いになります。曽根さんご本人もお母様の最期を病院で看取られたご経験があり、最後の1週間でも2週間でも自宅で過ごせたら違っただろうなという思いから、終末期の在宅医療には積極的にかかわっていきたいと考えているそうです。
「薬剤師って、同じ薬を出してるだけが仕事じゃないんですよね。勉強すること、知識をつけることはもちろんですが、何より、話を聞く、ということが大事だと思います。一人一人との関わりの積み重ねからその人のことをわかる、というプロセスを抜きにしてはいい医療はできないという信念で、これからも地域の健康を支えていきたいです。」 という曽根さん。社内でも勉強会や提案をしながら、つながりを大切にお仕事しています。
アクティブでチームワークが自慢の栄養部
栄養部は栄養士、助手、事務担当の総勢11名で構成されています。
担当グループは、薬局運営、オリジナル食品の松本堂の企画開発、機能訓練デイサービス「ネオリハ」での栄養ケア、地域での講話活動、と分かれてはいますが、グループ間に垣根はなく、常にチームワークよく業務にあたっています。
今回お話を伺った小林明依さんは薬局運営を担当しています。まつもと薬局に入社して8年目だそうで、札幌での進学、就職を経て帯広に戻ってきました。
「最初は病院の厨房で管理栄養士として働いていました。同じ方が入退院を繰り返している、その原因が食事の管理の難しさにあるというケースをみてきて、お家でできることがあったらなあと思っていました。帯広に戻ってきたらまさにそんな取り組みをやっている薬局があったので、これは!と思って採用試験を受けました。」とのことで、栄養素だけを考えるのではなく、お食事を召しあがる方の生活からサポートしたいという視点が今のお仕事にいかんなく発揮されています。
普段は各店舗の店頭で、患者さんからのお食事の相談をうけたり、アドバイスを行ったりしています。
相談にくる患者さんの症状は千差万別。
今回お邪魔した自由が丘店は糖尿病専門病院の隣なので、糖尿病の患者さんが多いそうですが、だからと言って一律の対応をするわけではなく、一人一人の状態に合わせた提案をしているそうです。
▲ 薬局内では病態に合わせた様々な食品も取り扱っています。
▲ オリジナルブランドまつもと堂の「飲むお酢」は人気商品。
▲ フロンティア店ではカフェでいただくこともできます。
「売上のために何でも売りなさいという会社ではないので、私たちも、本当にその方に合ったものだけをお勧めできます」と小林さん。
スタッフ一人一人の真摯な対応が人を呼び、処方箋がなくても食品だけ買いに来るお客様も増えたそうです。
また、適切なアドバイスができるように、情報を整理することも大事だと小林さんはおっしゃいます。
病院はもちろん、栄養士会や地域の各施設といった横のつながりが本当に大事だと実感しているそうで、調理指導や出前授業、食育講座など地域に根差した栄養指導へと飛び出すこともあります。
特に腎臓病の方向けの講習会、食事制限のある方々への講習会は回を重ねて45回にもなりました。新型コロナでの開催中止の悔しさを乗り越え、先日には調理講習も再開。生の対面の講習は全然違った、と小林さん。
「日常の計量の仕方から一つ一つアドバイスすることもできましたし、日常薬局でお話されている方ともよりコミュニケーションができました。新型コロナの関係上少人数開催にはなったものの、やはり嬉しかったです。」と顔をほころばせて語ってくださいました。
▲ 栄養士の小林さん。手にもっているのは、まつもと堂の「飲むお酢」
企画力が光る場面はほかにもたくさんあります。例えば、腎臓病食の商品開発の際にはレシピコンテストも開催し、地域の方のアイディアをレシピとして配布しました。
▲ レシピ集を作成する際も、若い方のセンスと技術力に、「見やすい文字や色味はなにか」という経験値がプラスされました。おかげで世代を超えて誰にでも見てもらえるレシピとなりました。
若い方にも栄養に興味を持ってほしいとの思いから、SNSでの発信にも力を入れています。
その原動力となるのが「まずはやってみよう」というフットワークの軽さ。
「黙って座っている暇はない、という感じですね」と笑う小林さん。
その経験と豊富な知識、地域に根差してきた実績がカタチになったもののもうひとつがタニタレシピコンテストでの堂々入賞。小林さんもプレゼンの練習台になったりなど、ここでもチームワークが発揮されました。
▲ タニタレシピコンテスト特別賞受賞は、十勝毎日新聞にも掲載されました!
また、栄養部は全員が女性だからこそ、働く女性ならではの苦労も分かち合える仲間の存在も大きいとか。
小林さんご自身も小さなお子さんを持つ子育て世代ですが、子育てがひと段落した上司が「みんな、産休育休取って戻っておいで。」「子供が熱を出すのは当たり前。早く迎えにいってあげて。」と日ごろから声をかけてくださるそうで、こうしたちょっとした声掛けによって職場の雰囲気もよくなり、気兼ねなく働けるそうです。
身近にいて食べ物のことはなんでも相談できる存在のまつもと薬局の栄養士さんたち。これからも活動の幅がどんどん広がりそうです!!
これだけではない「チームまつもと」の底力
インタビューを通して感じた熱量、少しでも伝わりましたでしょうか。
次回も引き続き、まつもと薬局のご紹介を致します。
地域の高齢者の健康を支える介護事業部、「チームまつもと」を陰から支える事務部、
どこが欠けても成り立たない、大切な役割を担う方々をご紹介予定です。
ご期待ください。